こんなにあった!言葉で考える6+αの方法とコツ
もし、あなたが自分に真剣に向きあおうと思うなら、言葉は、もっとも最初に向き合うべき部分です。
もし、あなたが考えることを仕事にしているなら、言葉は、なにより大切な仕事道具です。
人間に固有の能力だと言われる”言葉”。
言葉なしでも動きやイメージで考えることはできます。非言語思考と呼ばれるものです。
ですが、言葉を使うことによって、はるかに複雑で精密に、そしてより広く大きく物事を考えることができます。
より効率よく文化を、意味を蓄積・伝達することができるようになります。
なにより、人間は言葉を積み重ねて自分の価値観や信念を作り上げており、それが思考を形作っています。
つまり、思考の質を高めたいなら、コミュニケーションの質を高めたいなら、言葉をどれくらい上手に扱えるかが、非常に重要な鍵だと言えるでしょう。
私はこれでも考えることを専門に研究してきた者の端くれですし、仕事柄さまざまな人に考えることを促してきました。ですから、その経験を踏まえて、今回は「言葉で考える方法」に絞ってご紹介していきたいと思います。
この記事ではまず、ざっくりとどんな言葉の扱い方があるのかについて見ていきます。(書く、話すなど)
次に、言葉の扱い方のうち、考えるのに特に有用なものをピックアップしてご紹介していきます。合わせてそのコツもお伝えできればと思います。
最後に、言葉で考える応用的な方法についてお伝えして、いますぐできるTodoに落とし込みます。
言葉の定義と役割
まずは、これを簡単に見ておきましょう。定義があいまいだと誤解が生まれますし、言葉のどんな性質が考えることをサポートしてくれているのか、ということを知ることで、自分の言葉の扱い方が適切かどうかが判断できるようになるからです。
といっても、このテーマ一つで何冊でも本が書けると思いますので、基本的な性質だけを確認したいと思います。
言葉の定義と性質
まず、言葉は基本的になんらかの意味や概念に対応しています。これが大前提です。
そして、言葉を特定の前提の元で解釈することで、人間は意味を読み取ります。
ポイントは、前提によって言葉が指すものは変わってくるということと、言葉はそれが表現するものごとそれ自体の一部しか切り取ることができないということです。
また、一般的に、言葉というと、音声や文字で表現されるものをイメージすると思います。ただ、”言語”として研究されるときは、ボディ・ランゲージや手話なども言葉として含めることが多いです。また、人口言語であるプログラミング言語も、言葉には違いありません。
ただし、今回の記事は”考えるのに役に立つ”言葉の扱い方がテーマなので、基本的には音声や文字で表現される言葉を中心に扱うことになります。
”考える”の定義と言葉の役割
言葉を定義したら、考えるということも定義しなくてはなりません。ですが、そんなことやっていてはやはり日が暮れてしまうので、ここではざっくりと、人間の知的な活動全般を指すものと定義しておきます。
ものすごく強引な思考のしくみ論
さらに、ものすごく強引な思考のしくみ論を展開したいと思います。
特に意識的な思考において、人間はイメージなしに思考することができません。ここでイメージといっているのは、単に視覚的なイメージではなく、感覚や認識の集合としてのイメージです。10と1なら1の方が小さい、とか、ボールはこうやって投げたらこう飛ぶ、とか、そういったものです。だから、ただ言葉を並べても、具体的なイメージが伴っていなければ意味として全く充実しませんし、思考もはかどりません。
たとえば、「25世紀の月の居住スペースでさかんに行われているボールを使ったスポーツの”Mooba"がうまくなるにはどうしたらいいか」と考えてみても、全く頭が働きません。こんなに言葉を並べているのに。でも、「英語がうまくなるには?」なら、たくさんの方法が思いつくと思います。
考える上での言葉の役割
つまり、思考を突き動かすのはイメージ(感覚や認識の集まり)なのです。言葉は、イメージの一部を切り取ることで意識を集中させたり、イメージを結びつけて思考を広げたり、定義となるイメージを呼び出して思考を整えたりする媒介役だと言えるでしょう(強引すぎて本当に哲学やってたのかと言われそうですがご勘弁を…)。
考える上での言葉の役割は、イメージを概念化し客観的に捉えられるようにすることだと思います。
ですが、言葉は同時に、人間の感覚や認識、イメージを呼び起こすトリガーでもあります。
考えるときの言葉の扱い方のポイントは、これらの役割をうまく引き出すことです。
つまり、正確に自分の中のイメージを言葉に対応させることと、より明確なイメージを引き出す言葉を使うことです。
では次に、たくさんある言葉の扱い方の区別を見て行きましょう。
言葉の扱い方の区別
言葉を上手に扱うにはどうしたらいいのか?と考えたとき、まず問題になってくるのが、言葉で考える方法が非常に多様なことです。
あなたは普段どんな風に言葉を使っていますか?
これをいろんな人に尋ねると、実は人によって全然違う上に、恐ろしくたくさんの方法があることがわかります。
- 最も大きな違いは、耳をベースに言葉を使うのか、目をベースに言葉を使うのか、という点です。音声で考えるか、文字で考えるか、という点ですね。
- 第二に、相手がいるのかいないのか、という点も違います。コミュニケーションの延長かどうか、という点です。
- 第三に、言葉を表現する媒体の違いがあります。頭の中か外か。外ならアナログかデジタルか。
- 第四に、言語の違いがあります。日本語か、英語か、はたまたドイツ語か。混ざっているかもしれません。
- その他、文章か単語か、書き言葉か話し言葉か、マインドマップを使う、KJ法を使う、などなど
よくよく考えてみると、人は非常にたくさんの方法で考えていることがわかりますね。最初の三つの違いだけで、2×2×3、つまり、12種類もの方法があるんですから。
あなたは、特にどんな方法を使うことが多いですか?
誰かと話しながら考えるタイプなのか、一人でじっくり書きながら考えるタイプなのか。
頭の中だけで考えるタイプなのか。
ぜひ一度振り返ってみてください。
/*また、言葉は意識せずにいろいろな用途で使われすぎているので、まずその区別をしっかりして、用途に合わせた方法で言葉を扱っていく必要があります。*/
扱い方の違いによる長所と短所
そして、どの方法にも長所と短所があります。
たとえば、
- 耳をベースに考えるとき、結論に気持ちがこもってコミットしやすく、集中していれば考えが展開するスピードも非常に速いですが、気持ちがこもる分誤りを正しにくく、全体が見えにくい分論点がズレやすいという難点があります。また、耳からは時間あたりの情報量に限界があります。
- 目をベースに考えるとき、気持ちや感情を客観的に捉えやすく、たくさんの情報を使いながらじっくりと精密な思考が可能ですが、広がった思考をまとめるのに時間がかかったり、閃いたアイディアが広がりにくくなることもあります。
- 相手がいるときは、その分より広い視野で考えることができますが、相手によっては考えることに集中できなくなります。また、相手が多すぎれば考えがまとまりません。
- 一人で考えるときは、自分なりの考えを集中して展開することができますが、多くの場合視野は狭まります。
などなど。
全ての長所と短所を比べていたらとても長くなってしまいますのでやめておきます。
さて、ここからは、最も典型的な視覚と聴覚の区別をベースに、それぞれ有用な方法をお伝えしていきます。
視覚的に言葉で考える方法
表現ですから、もちろんバリエーション自体は無限にあります。ですが、具体的なイメージを持ってもらうために、いくつか示したいと思います。
手書き
まず思いつくのは、メモ帳や手帳に手書きする方法でしょう。アナログにはアナログのよさがあります。文字に感情が宿りますし、キーボードで打ち込んでいるときとは違う感覚を使いますから、手書きで言葉を書くことに慣れている人は、手書きの方が頭がよく働く、という場合も少なくないようです。
フォーマットなんて気にせず、自由自在に書けるということも大きいです。
また、一つ一つの言葉や文章に時間をかけられる文、自分の中のイメージとじっくりと向き合うことができるという側面もあると思います。
逆に素早くわ~っと書き出していくと、確かにいろいろな角度から表現でき、イメージは広がるのですが、それぞれの視点あたりにかけられる時間は減っていきます。むしろ急いで表現を考えるのに思考のリソースが割かれますし、その場で思いついた表現に引っ張られて、せっかくあったイメージが消えていくこともあると思います。なんだか抽象的ですが、小説なんか書いてみるととてもよく実感できると思います。
デジタル
次に思いつくのは、やはりデジタルな方法でしょう。ここにはかなりバリエーションがあります。ハードウェアにしても、携帯、スマホ、タブレット、ノートPC、デスクトップPCなど、さまざまです。ソフトウェアなら、メモ帳ソフト、Wordなどのワープロソフト、エクセルも空間的に情報をマッピングできて有効です。
さっきは手書きを擁護しましたが、デジタルには無限の可能性があると思っています。まぁ最近はデジタルで手書きもできますしね(手書きの良さとは別にアナログの良さもあるとは思います)。
言葉の使い方
そのほか、言葉の中身に関しても、単語をぶつぶつと並べていく方法もあれば、箇条書きで単語と文を並べることもできるし、文章を書くこともできます。
文章なら混合型がおすすめ
この書きだす方法で重要なことは、自分が表現すべき膨大なイメージを、どうやってうまく文字にするか、ということです。口にする場合と違い、文字にする、というのは時間がかかる作業です。できるだけ速く、かつわかりやすく書きださなくてはなりません。一方で、口にする場合よりも、自分が今どんな意味の言葉を使っているのかについて意識を集中させることができ、かつ表現した内容を振り返ることが簡単です。この点は、手書きの方が良いという人も多いところだと思います。
これらを踏まえて、自分にとってもっとも良い方法を組み合わせて使いましょう。これは私の経験則に過ぎませんが、
最初は手で書いて頭を働かせてから、ちょっとずつ整理されてきたら、デジタルで一気に書きだす
というのが一番効率がよいと感じています。頭が働いているときは最初からデジタルでいきます。
言葉の内容も、最初は単語単語でできるだけ網羅的に頭の中身を書きだしておいて、そのあとつなげて文に、そして文章にします。いきなり文章を書くのも楽しいのですが、だいたい目的からそれた文章になってしまいます。発想は広がりますけどね。
また、思考の構造を整理するなら、やはりマインドマップは非常に効果的だ、ということを付け加えておきます。
どの方法も、慣れが必要です。まずはすでに慣れてしまっている方法で表現する癖をつけてから、新しい方法を模索していくのがよいでしょう。
聴覚的に言葉で考える方法
書きだす方法と同じく、バリエーションはさまざまですが、いくつか示したいと思います。
最もポピュラーな”内語”
ここでは口にする、としましたが、ポイントは音として理解する、ということ。おそらく言葉を音として表現する際、最もよく使っているのが、頭のなかで言葉を再生する方法、いわゆる内語でしょう。
客観的に把握する、という意味では対象化する効果は低いですが、頭のなかでぼんやりと気持ちに浸っているような状態と、”いまちょっと怒っている”と言葉で考えるのとでは、かなり差がでてきます。
メタ意識が重要
ところが、じゃあふだんと同じでいいんだ、となるかといえば、そうではありません。おそらく、自分の気持ちや考えそれ自体に意識を向けること(メタ意識といいます)に普段から努力している人でなければ、自分では言葉で考えているようでいて、ちゃんとすべてを言葉にして、捉え直せるように考えているということはありません。ですから、この方法を行うときは、しっかり捉え直せているか、ひとつひとつ確認する努力をしなければなりません。
付け加えると、書きだす場合でも、頭の中で文字をイメージする、あるいはマインドマップをイメージする、という方法も、実は可能です。
これらの頭の中で音やイメージ、その他の感覚を再生して客体化する方法は、普段から意識して行うようにすることで、確かに気持ちをコントロールする能力や考える能力が飛躍的に高まります。また、メタ意識を高めて気持ちを整理する方法としては、瞑想があります。これも、非常に効果の高い方法です(メタ意識・瞑想についてはこちら(準備中))。ですが、特に気持ちの整理が難しいときや、考えを整理するときは、補助として用いいるようにしましょう。
人と話す
内語を使う方法以外には何があるでしょうか。やはり最もメジャーな方法は、人と話すという方法でしょう。
この方法では、相手の影響を大きく受けてしまうことに注意が必要です。言葉の内容も相手にわかるように説明する形になりますし、自分独自の表現もなかなか使いづらくなります。なにより、人前で口にするのに抵抗のある言葉や気持ち、考えはたくさんあります。しかも、抵抗のあるような内容に限って、自分でも上手く目を向けられていない部分であることが多いのです。
嘘をついたり、話しに見栄が入ったりせず、感じたことそのままを伝えられるようになるには、知識や技術が必要です。そうした会話ができる関係や、場所(環境)を作るのにも、知識や技術が必要です(こうした知識・技術についてはおいおい投稿していく予定です)。
つぶやく
もう一つ挙げるとすれば、自分の気持ちをひとりごとのようにつぶやく、あるいは録音する方法があります。
これは、ちゃんと自分だけの空間を用意できれば、安定して機能しますし、録音すれば振り返ることもできます。録画すれば、表情まで読み取ることができ、自分自身を振り返るための非常に重要な手がかりになります。実はかなり効果的な方法です。
ですが、なかなかその一線を超えるのが難しい。最近は、ほとんどの携帯電話やPCに録音機能、録画機能がついていますから、ぜひ上手く活用してください。
このように、書きだす、口にする、というだけでも、沢山の方法があることがわかったと思います。重要なことは、自分にあった方法を使って、とにかくまずは表現する癖をつけることです。それが安定してできるようになったら、どんどんいろんな方法をアレンジしていってください。
おすすめの方法
最後に、私がおすすめしている方法をお教えします。
書きだすことと話すことの組み合わせだといいましたが、文字通り、会話しながらその内容を書き出していきます。ただし、少々やっかいな前提として、ちゃんと話を聴く技術を持っていて、気兼ねなくなんでも話せる友人がいることが必要です。しかし、この前提さえクリアできれば、あとは簡単。紙やPCを前に、いつもどおり話をしながら、その内容をメモしていくだけです。マインドマップのような形でメモしていくのがやりやすいと思います。
こうすれば、人と話していることで頭が働きますし、相手の目線を感じることで、自分の気持ちや考え自体を無意識に何度も捉え直そうとします(もちろん自分の間違いを認めるだけの最低限の用意は必要です)。
また、ひと目で会話を振り返ることができるので、話がそれにくく、より客観的に自分を見つめなおすことができます。
話し言葉を一つ一つ文字にする過程で、しっかりと表現すべき内容に集中することができ、あいまいになりがちな話し言葉をより正確な表現にしつつ、気持ちや考えを再度捉え直すことができます。
なにより、相手がよければ、上手く質問をして、気づいていない自分の一面を気づかせてくれるかもしれません。
要は、書きだす方法と口にする方法の両方のメリットをかなりの部分併せ持つことができるのです。それどころか、文字にしながら話す、ということは、話し自体の質をかなり高めるため、相乗効果があります。
もし最初の条件さえクリアできるなら、ぜひ試してみてください。あるいは私にご相談ください。
いますぐできること
目安時間:30分
- 手帳かノートを開いてペンを出しましょう。
- 整理したい気持ちや考えを書き出しましょう。思いつくままに。
- Evernote、Word、ワードパッドなど、何でもいいので開いて下さい。
- 同様に整理したい気持ちや考えを書き出しましょう。思いつくままに。
- どんな風に違ったか、いつどちらを使おうか自分なりに判断してください。
- アドレス帳でもFacebookでもいいので、友達が一覧になっているものを開きましょう。
- 信頼できる友達を選んで、とりあえず"今度会おう”とメールし、会う約束を取り付けましょう(アポがとれればなんでもいいです)。
- 会う目的を書き出し、話す内容を整理しましょう。
- 相手にとっても有益な時間にするために、自分に何ができるか考えましょう。
- 可能なら、事前にこの記事の内容を相手に共有しておき、試してみたい旨を伝えておきましょう。
まとめ
まずは、普段「考えて」いるときに、言葉がどんな風に働いているかを意識することが大切です。
その上で、効果的に言葉を使うためには、「客体化」と「社会化」を意識して、自分に合ったツールを使いましょう。
この二つを両立させた、書いてまとめながら話をする、方法を、どんどん使っていって下さい!
参考
そのうち参考図書をアップします。